専城乳児保育園 ~子ども達の「今の気持ち」と「今の発達」に寄り添う優しさを大切にしています。~

理念ブログ

暗闇の中の対話

2022年5月31日

 現代人は目を酷使しているとよく言われますが、私たちの眼というものは、それ自体にものを見る機能はありますが、見る力はありません。光の力を借りて始めてものを見る事ができているのです。

 だから光が全くない空間でしたら何も見ることはできないのです。日常生活の中では、どこかに必ず光源があり、100%の暗闇という状況はほぼ無いので、光がないと物が全く見えないという実感はわきません。

 その100%の暗闇を体験できる場所があるそうなんです。それが「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(暗闇の中の対話という意味)というイベントです。

 これは、ドイツの哲学者アンドレアス・ハイネッケ博士の発案によるもので、今までに世界50か国以上、900万人を超える人が参加しているイベントなのだそうです。

 参加者はまず数人のグループとなり、事前に白杖を渡され、完全な暗闇の中で、視覚以外の五感をフルに使って空間を探検したり、日常の色んななシーン(森を再現したセットがあったり、ブランコに乗ったり、お絵かきしたり、特設カフェでお茶したり)を体験しながら様々なことを感じ取っていくそうです。

 そこでは「あなたは目以外のなにかで ものを見たことがありますか?」というメッセージが込められています。

 日本でも、様々な気付きが生まれると、600社を超える企業が人材育成の研修として利用したり、大学とか、小中高の生徒が教育の一環として参加したりしているそうです。

 各グループには、アテンドと呼ばれる特別なトレーニングを受けた視覚障害者のスタッフが、案内しながら参加者をワークへ導いていきます。

 しかしそれは、障害者疑似体験のような福祉的イベントではありません。楽しみながら、すべての人が対等に対話する機会を提供することが目的なのだそうです。

 暗闇では一人では何も出来ませんから、声を出してコミュニケーションを取り、グループ全員が協力することが必要になってきます。しかも見えませんから、お互い自分が思っていることを相手が理解できるように話さなければなりません。

 日頃気にも留めなかった自分や相手、話すことについて改めて考えさせられる。だから「暗闇の中の対話」というのでしょう。

 実際参加した人の感想では、「他人を感じることが大事」「人を信頼するということ、助け合うことの大切さを感じた」とか、「くらやみがとても不安だったけど、お友達が手を繋いでくれたからすごく安心した」とか「人や世界とつながる力を取り戻したように感じた」などと語っておられています。

 この2年半、やれソーシャルディスタンスだ、やれオンラインだと、人と人との接触が極力避けられてきた結果、どんどん人と人との結びつきが弱くなってきています。

 やはり、実際に会って、お互いに言葉を交わし合い、語り合うことがいかに大切なことか。それによって初めて人との繋がりや、信頼、支え合いということが芽生えてくるのだということを改めて考えさせられました。

 一日もはやく、新型コロナ感染症が収束し、何の心配もなく人と人が触れ合い語り合うことが出来ようになることを願ってやみません。

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